
近年、自動ドアは商業施設やオフィスビル、医療機関など、様々な建物に不可欠な設備となっています。しかし、停電時の自動ドアの動作については、十分な理解が行き渡っているとは言えません。
実は、自動ドアには建物の用途に応じて異なる停電時対応が設計されており、その違いを知ることは建物の安全管理において極めて重要です。
この記事では、停電時の自動ドアの基本動作から、建物タイプ別の対応方法、さらにはセキュリティ対策をご紹介します。特に、安全性を重視した「フェイルセーフ」と、セキュリティを重視した「フェイルセキュア」という2つの設計についても詳しく説明し、それぞれの特徴と適切な使い分けについて解説していきます。
停電時の自動ドアはどうなる?

突然の停電は、人々の安全や建物の管理において大きな不安要素となります。特に自動ドアの場合は、停電時の動作を理解しておくことが重要です。自動ドアが停電時にどのように動作するかは、設置されている自動ドアのタイプによって大きく異なります。
停止タイプ:その場停止型
最も一般的なのは、停電時にその状態で停止するタイプです。開いていれば開いたまま、閉まっていれば閉まったままとなります。また、ドアが動いている最中に停電が発生した場合は、その位置で停止します。このタイプは、動作がシンプルで分かりやすい反面、ドアが中途半端な位置で止まってしまう可能性があります。
自動解錠タイプ:停電時開放型
商業施設やオフィスビルでは、停電と同時に自動的にロックが解除されるタイプが多く採用されています。このタイプは、停電時に通常のドアと同じように手動での開閉が可能となります。人命を最優先に考えた設計で、緊急時の避難にも支障がありません。ただし、施設の防犯面では別途対策が必要となります。
自動施錠タイプ:停電時施錠型
銀行やデータセンターなど、高いセキュリティが求められる施設では、停電時に自動的に施錠されるタイプが使用されています。重要な資産や情報を守るための設計ですが、内側からは必ず脱出できる仕組みが備わっています。このタイプは、セキュリティと安全性を両立させた設計となっています。
建物の管理者は、建物のドアがどのタイプなのかを把握し、利用者への適切な案内ができるよう準備しておくことが大切です。また、日頃から施設利用者に対して、停電時の動作について説明しておくことで、緊急時のパニックを防ぐことができます。
停電時の自動ドアの対応について
停電が発生した際、自動ドアの動作は設置されているドアの種類によって大きく異なります。多くの場合、安全機構が働き、開放状態または手動操作可能な状態になりますが、その特性は建物の安全性に大きく影響します。
引き戸(スライドドア)の停電時

基本動作:電源が切れると、多くの場合ロックが解除され手動操作が可能に
引き戸の停電時の課題:
引き戸タイプの自動ドアは、停電時に手動での開閉が可能になるものの、実際の操作には課題があります。特にガラス製の引き戸は非常に重く、レールに沿って動かすには力が必要です。停電時に途中で停止してしまった場合、避難経路としての機能を果たせない可能性があり、安全管理上の重大な懸念事項となります。
自動開き戸(スイングドア)の停電時

基本動作:通常のドアと同じように手動で開閉可能
開き戸の停電時のメリット:
開き戸タイプの自動ドアは停電時でも通常のドアとして使用できる利点があります。電気がなくても、私たちが普段使用している開き戸と同じ感覚で開閉操作が可能です。この特性は、高齢者や子どもでも簡単に操作できることを意味し、非常時の避難においても大きな強みとなります。
このように自動ドアの停電時の対応は、引き戸と開き戸によって明確な違いがあります。施設管理者は、建物の用途や避難経路としての重要性を考慮し、適切なタイプを選択する必要があります。安全性とリスク管理の観点からは、特に避難経路として使用される場所では、開き戸タイプの自動ドアシステムがより適していると言えます。
停電時の建物タイプ別の自動ドア対処法
マンション、店舗、病院など、建物によって停電時の自動ドアへの対応方法が異なります。それぞれの特徴をわかりやすく解説していきます。
停電時のマンション

マンションの場合、オートロック付きの自動ドアが一般的です。停電になると、多くの場合は自動的にロックが解除されて、普通のドアとして使えるようになります。ただし、建物によって対応が違うので、入居時に管理会社に確認しておくことをおすすめします。また、事前に非常用の手動解除の方法を確認しておくと安心です。
停電時の店舗・オフィスビル

店舗、オフィスビル、商業施設では、お客様が安全に避難できることを最優先に考え、停電時は自動ドアのロックが自動的に解除されて手動で開けられるようになるか、非常用の電源で一定時間動き続けるかのどちらかになります。この仕様は消防法でも定められています。
停電時の病院

病院は24時間、患者さんの安全を守る必要があるので、より厳しい規則があります。医療法で定められた規則により、非常用電源を使って自動ドアを動かし続けられるようにしたり、手動で切り替えられる装置を設置したりすることが決められています。
どの建物でも共通して大切なのは、「事前の準備」です。停電が起きてからあわてないよう、停電時の建物の対応方法を確認しておきましょう。また、非常時は必ず施設の係員の指示に従うようにします。
停電時のセキュリティ対策
停電時の自動ドアの施錠制御には、「フェイルセーフ」と「フェイルセキュア」という2つの基本的な概念があります。この2つは、建物の用途や場所によって使い分けられています。
フェイルセーフ(安全重視)
自動ドアの場合、停電という異常事態が発生すると、自動的にロックが解除され、手動で開閉できる状態になります。そのため、災害時などでも人々が確実に避難できます。
商業施設のメインエントランスや、避難経路として使用される出入り口に採用されています。この方式では、電気によって施錠を保持し続ける仕組みになっています。そのため、電源が切れると自然に解錠される設計となっています。人命を最優先に考えた方式で、緊急時の避難を確実に確保できます。
フェイルセキュア(防犯重視)
金融機関、データセンター、美術館の収蔵庫など、高いセキュリティが求められる場所で採用されています。
この方式では、機械的な力(スプリングやラッチ)で施錠を保持し、電気は解錠のために使用します。そのため、電源が切れても施錠状態は維持されます。ただし、内側からは必ず脱出できる仕組みが義務付けられており、安全性も確保されています。
選択の基準
どちらの方式を採用するかは、その場所の用途や求められる機能によって判断します:
適切な方式を選択し、必要に応じて非常用電源との連携や代替の避難経路の確保など、総合的なセキュリティ対策を検討することが重要です。
停電時も安心な開き戸用自動ドアシステム
『アシスト・スイング®』

開きドア専用の自動ドアシステム「アシストスイング」は、停電時の安全性とセキュリティを両立する革新的な製品です。
停電時の安全対策
この製品の大きな特長は、停電時の安全対策の充実にあります。停電が発生した場合でも、ドアは手動での開閉が可能な状態となり、避難経路としての機能を失うことはありません。さらに、オプションのバッテリーを追加することで、停電時でも一定時間は通常通りの自動運転を継続できます。この機能により、高齢者や車椅子をご利用の方も、停電時に一人で避難することが可能です。
火災時の安全対策
火災時の対応も充実しており、火災信号を受けることで自動的に手動モードに切り替わります。また、バッテリーを活用することで、避難専用ドアとして自動開放状態を維持することもできます。火災信号と連動して閉鎖するように設定することも可能で、防火区画としての性能も確保できます。
非常時の安全性確保は、建物管理における重要な課題です。アシスト・スイング®で、建物の規模や用途に応じた最適な自動ドアをご提案をさせていただきます。
停電時の安全性とセキュリティを両立する
『電気ストライク』

突然の停電は、建物のセキュリティと安全性に大きな影響を与えます。特に自動ドアの制御は、人命の安全とセキュリティの両面で重要な課題となります。当社の電気ストライクは、より安全で実用的な選択肢をご紹介いたします。
フェイルセーフ・フェイルセキュアに対応
当社の電気ストライクの全シリーズに共通する重要な特長は、フェイルセーフとフェイルセキュアの両方に対応できる点です。商業施設の主要出入口や避難経路には、停電時に自動解錠されるフェイルセーフモードが適しています。一方、データセンターや金融機関などセキュリティを重視する場所には、停電時も施錠を維持するフェイルセキュアモードが推奨されます。
電気ストライクはこれらの柔軟な設定により、建物の用途や場所に応じた最適な運用が可能です。設定変更も専門知識がなくても簡単に行えるため、建物の用途変更にも柔軟に対応できます。また、高い耐久性により長期使用が可能で、メンテナンス性にも優れています。
GK300シリーズ:スタンダードモデル

標準的な自動ドアに最適な基本モデルです。15mmまでのラッチに対応し、シンプルな構造と信頼性の高い動作が特徴です。12/24VDC対応で、ステンレス製のフェイスプレートにより長期使用に耐えます。オプションのラッチモニター機能で、ドアの状態監視も可能です。特に商業施設やオフィスビルで多く採用されています。
GK1300シリーズ:ヘビーデューティモデル

ANSI/JIS規格準拠の高耐久モデルです。24mmのラッチ対応で、100万回の動作試験をクリアした信頼性が特徴です。4種類のフェイスプレートを標準装備し、様々な設置環境に対応します。大規模商業施設や交通施設など、高頻度使用される場所での採用が多く、堅牢なソレノイドが安定した動作を実現します。
GK1480シリーズ:ガラスドア専用モデル

ガラスドアの特性を考慮して設計された専用モデルです。10mmと12mmのガラス厚に対応し、水平フェースプレートによる位置調整機能を備えています。ステンレスヘアーライン仕上げの美しい外観と、簡単な取り付け方法が特徴です。高級オフィスビルやショッピングモールのガラスパーティションなどで採用されています。
GK1276/96シリーズ:パニックバー対応モデル
プルマンラッチボルト付きのリム式パニックバーに対応した専用モデルです。切り欠き不要の面付け型で、680kgの静止時施錠力を持ちます。UL防火認定(1.5時間)を取得し、25万回のUL試験と100万回の自社試験をクリアしています。劇場や学校など、避難経路として重要な場所での採用が多く、高い安全性があります。
停電対策は建物管理における重要な課題です。用途や目的に応じた最適な製品選定について、ぜひご相談ください。
停電時の自動ドア対策:
安全とセキュリティの両立に向けて
停電時の自動ドアの対応は、建物の用途によって適切な選択が必要です。商業施設や避難経路では人命を最優先するフェイルセーフ方式、金融機関やデータセンターではセキュリティを重視するフェイルセキュア方式が採用されています。
特に注目すべきは、ドアのタイプによる違いです。引き戸は停電時の操作に課題がある一方、開き戸は通常のドアと同様の使用が可能で、避難経路として優れています。
いずれの場合も、事前の準備が重要です。建物管理者は施設のドアタイプと停電時の動作を把握し、利用者への適切な案内方法を定めておく必要があります。また、非常用電源やバッテリーの活用、代替避難経路の確保など、総合的な対策を講じることで、より安全な建物管理を実現できます。
開き戸を自動ドア化する
工事・メンテナンスを承ります!

開き戸用 自動ドアシステム
アシスト・スイング®
当社では、開き戸用自動ドアシステム「アシスト・スイング®」の輸入販売、新規工事・改修工事・メンテンナンス工事を行っております。
新築物件では、建物の用途や人の動線を考慮し、最適な開き戸自動ドアをご提案いたします。例えば、オフィスではお客様と従業員の利便性を、商業施設では来店されるお客様の快適さを第一に考えた提案を行っています。
既存の手動開き戸を自動ドアに改修することも可能です。工事期間を最小限に抑え、できるだけ日常の活動に支障が出ないよう配慮しながら作業を進めます。
導入後のメンテナンスも万全の体制で承っています。メンテナンス契約による定期的な点検により、不具合の早期発見や予防保全を行い、ドアの安全性と快適な動作を維持します。お客様に安心してご利用いただけるサービスを提供できるよう努めてまいります。
アシスト・スイング® は、耐久性、安全性、利便性に優れた自動ドアシステムです。オフィスやホテル、病院などあらゆる場所で、スムーズな人の往来を実現します。お問い合わせは、弊社ウェブサイトの「お問い合わせフォーム」にて承っております。皆様からのご連絡を心よりお待ちしております。