なぜ今、防水・防爆レリーズが注目されているのか

化学工場やガスを扱う施設、半導体製造工場など、可燃性物質を取り扱う現場では安全対策が最優先事項です。そんな環境下で近年、特に注目を集めているのが「防水・防爆レリーズ」です。防火戸の安全性を高める電磁レリーズの中でも、特殊環境での使用に特化した製品として評価されています。この製品が、なぜ今注目されているのか、その理由を以下にまとめました。
安全基準の厳格化
各種産業施設における安全基準が年々厳格化し、従来の防災設備では対応できないケースが増えています。特に化学薬品工場やガス工場では、防爆性能を備えた設備が必須となっています。
工場のデジタル化推進
工場のデジタル化(スマートファクトリー化)に伴い、特殊環境でも使用できる電気設備の需要が高まっています。防爆・防水レリーズはこうした現代の製造現場のニーズに応える製品です。
国際規格への適合
グローバル展開を行う企業では、国際的な安全基準に適合した設備の導入が進んでいます。当社の防水・防爆レリーズは、国内基準はもちろん、国際的な防爆規格にも対応しています。
SDGsへの取り組み
企業のSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みとして、労働安全衛生の向上が重視されています。防災設備の強化はその重要な一環として位置づけられています。
過去の事故事例からの教訓
化学工場や危険物取扱施設での火災事故の教訓から、より信頼性の高い防災設備への投資が進んでいます。特に、火災時に確実に作動する機構への関心が高まっています。
レリーズとは?防火戸の自動閉鎖装置の仕組み

レリーズとは、防火戸(防火扉)を通常時は開放状態に保持し、火災時に自動で閉鎖させる建築用の防災設備です。英語の「release(解放する)」に由来するこの装置は、建物内の人々の日常的な往来を妨げることなく、火災時には確実に防火区画を形成する重要な役割を担っています。レリーズの仕組みは、火災感知器と連動して作動し、防火戸を自動的に閉めることで延焼を防ぎ、避難経路を確保します。
電磁レリーズの主な種類と特徴
火災時通電式 電磁レリーズ
常時通電式 電磁レリーズ
通常時は通電状態で、電磁石(マグネット)の力でドアを保持します。火災信号や停電時に電源が遮断されると電磁力が解除され、ドアが閉鎖します。当社の電磁レリーズ「マグネット・ドアホルダー」はこのフェイルセーフ方式を採用しており、どんな状況でも確実な作動を実現しています。
特殊環境用 電磁レリーズ
設置環境に応じた特別な機能を持つレリーズで、以下のようなものがあります。
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防爆レリーズ:爆発性ガスや粉塵がある環境でも安全に使用できる構造
- 2防水レリーズ:湿気や水しぶきにさらされる環境でも確実に機能する構造
- 3重量ドア用レリーズ:大型の防火戸や重量のある扉に対応した強力な保持力を持つ構造
当社の電磁レリーズ「マグネット・ドアホルダー」は常時通電型電磁レリーズの一種で、電磁石(マグネット)の力でドアを保持する仕組みです。通常のレリーズとは異なり、火災時には電源を切ることでドアを解放するフェイルセーフ設計となっているため、万一の配線焼損や停電時でも確実に防火戸を閉鎖できます。
防水・防爆仕様の電磁レリーズは、通常では使用が困難な特殊環境でも安全に使用可能な構造となっています。
防水・防爆レリーズの特徴と一般レリーズとの違い

防爆レリーズは、電磁レリーズの機能に加えて、爆発の危険がある環境下でも安全に使用できるよう特別な構造を持っています。通常の電気機器は、スイッチの開閉時や故障時に火花(スパーク)が発生する可能性がありますが、これが引火性ガスや粉じんが存在する環境では爆発の原因となり得ます。防爆レリーズはこうした火花を外部に漏らさない設計となっており、危険区域でも安心して使用できます。
主な防爆構造の種類
防爆構造には、主に以下のような種類があります。
樹脂充填防爆構造
電気部品をエポキシ樹脂で完全に覆い、火花が外に漏れないようにした構造です。特別危険箇所(ゾーン0)、第一類危険箇所(ゾーン1)、第二類危険箇所(ゾーン2)のすべてで使用可能です。
耐圧防爆構造
頑丈な容器で覆い、中で爆発が起きても外に影響が出ない構造です。小型から中型の機器に向いていますが、重くなりがちです。
内圧防爆構造
安全増防爆構造
通常の使用では火花が出ない機器の安全性をさらに高めた構造です。主に危険性の低い場所で使われます。
防水構造の重要性
防水レリーズは、湿気や水分の多い環境でも確実に機能するよう設計された特殊なレリーズです。一般の電磁レリーズでは、水分の侵入によって故障や誤作動を起こす可能性がありますが、防水レリーズはこうしたリスクを大幅に低減します。化学工場での清掃作業や屋外に設置される防火戸など、水に接触する可能性のある場所での使用に最適です。
防水性能は通常、IPコード(International Protection Code)で表されます。例えば、IP65は「粉塵の侵入を完全に防ぎ、あらゆる方向からの水の直接噴射に対して保護される」ことを意味します。使用環境に応じて適切な防水等級の製品を選定することが重要です。
一般レリーズと防水・防爆レリーズの比較
一般レリーズと防爆・防水レリーズの比較 | ||
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特性 | 一般レリーズ | 防爆・防水レリーズ |
使用環境 | 一般的なオフィス、商業施設など | 化学工場、ガス施設、湿気の多い場所など |
安全性 | 標準的な安全設計 | 爆発性雰囲気中でも安全に使用可能 |
耐久性 | 一般環境向けの耐久設計 | 過酷な環境下でも性能を維持 |
防水性 | 限定的または無し | 高い防水性能(IPコードで規定) |
コスト | 比較的安価 | 特殊構造により高価 |
法的要件 | 一般的な建築基準法適合 | 危険場所での使用に関する特別な規制にも適合 |
特殊環境では一般レリーズでは対応できないリスクがあるため、環境に適した防爆・防水レリーズの選定が不可欠です。安全性向上のための投資は、長期的に見れば事故防止によるリスクを回避できるメリットがあります。
「危険場所」で必要とされる防爆構造

可燃性のガス・蒸気・粉塵と酸素(空気)が混ざり、爆発性雰囲気となる可能性のある場所は「危険場所」と呼ばれます。こうした場所では、電気火花や高温部が点火源となって爆発や火災を引き起こす危険性があるため、使用する電気機器には防爆構造が義務付けられています。
危険場所は、爆発性雰囲気が存在する可能性の程度によって以下のように分類されます。
危険場所の具体例
危険場所の具体例としては、以下のような場所が挙げられます。
危険場所の具体例 | |
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石油精製・石油化学プラント:原油や各種石油製品を取り扱うため、可燃性ガスや蒸気が発生する危険性があります。
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化学薬品の製造・精製工場:各種溶剤や反応性の高い化学物質を扱うため、爆発性雰囲気が生成する可能性があります。
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ガス・ガソリン・可燃性薬品の取扱所:高濃度の可燃性物質を取り扱うため、特に高い安全対策が求められます。
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塗料や溶剤を使用・製造する場所:揮発性の高い有機溶剤を使用するため、爆発性ガスが発生しやすい環境です。
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半導体製造工場:高純度のガスや特殊な化学物質を使用する工程があり、特定の区域では防爆対策が必要です。
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製薬工場:有機溶剤を使用する工程や、粉体を取り扱う工程では爆発リスクがあります。
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これらの場所では、通常の電気機器ではなく、環境に適した防爆構造を持つ機器を使用する必要があります。レリーズも例外ではなく、危険場所に設置される防火戸には適切な防爆レリーズを選定することが重要です。
防火戸とレリーズに関連する法律と規制

防火戸とレリーズに関しては、建築基準法や消防法などで具体的な規定が設けられています。レリーズの設置に関わる主な法的要件について解説します。
建築基準法での規定
建築基準法では、特定の建物において防火区画の形成が義務付けられています。防火戸は常時閉鎖状態を維持することが原則ですが、自動閉鎖装置(レリーズ)を設置することで開放しておくことが認められています。
消防法での規定
消防法では、防火対象物における防火戸の維持管理について規定しています。定期的な点検が義務付けられており、レリーズの動作確認も重要な点検項目となっています。
こうした法的要件を満たすためには、適切な性能を持つレリーズの選定と、定期的な保守点検が不可欠です。特に特殊環境での使用には、専門的な知識に基づいた製品選定が重要となります。
電磁レリーズ『マグネット・ドアホルダー』防水/防爆の製品紹介
当社の電磁レリーズ『マグネット・ドアホルダー』は、常時通電式のフェイルセーフ式防火戸保持装置です。火災時通電式のレリーズと異なり、火災時には電源を切ることでホールドを解除し、ドアクローザーにより防火戸を閉める仕組みになっています。この「常時通電・火災時遮断」方式は、火災で電線が焼け焦げても確実にドアを閉められる安全設計です。
電磁レリーズ『マグネット・ドアホルダー』の基本的な特徴
マグネット・ドアホルダーは約4,500台以上の納入実績(2025年5月現在)があり、多くの建物の防火戸で使用されています。火災時の防火区画形成に確実性をもたらし、大規模オフィスビル、商業施設、病院、学校など様々な建物で採用されています。
防水・防爆タイプの特徴
そして、この度新しく登場した防水・防爆仕様は、以下のような特徴を持っています。
防水・防爆タイプ導入のメリット
防水・防爆仕様の電磁レリーズには、以下のようなメリットがあります。
導入実績とお客様の声
防水・防爆タイプのマグネット・ドアホルダーは、化学工場、製薬工場、食品工場など様々な産業施設で採用されています。特に化学品を取り扱う施設では「安全性の高さ」が評価され、湿気の多い食品工場では「防水性能による高い信頼性」が評価されています。ここでは、お客様からの具体的な声についてご紹介します。
化学薬品工場
安全管理責任者
「腐食性の高い薬品を扱う現場で、通常のレリーズでは電気系統の故障がありました。防水/防爆レリーズの導入後は、蒸気がある環境でも安全に作動し、安全管理の信頼性が格段に向上しました。従業員の安心感にもつながっています。」
ガス製造工場
施設管理部長
「ガスの充填エリアと制御室の間の防火区画が、適切なレリーズがなく悩んでいました。この防爆レリーズは特別危険箇所にも設置可能で、フェイルセーフ設計により万一のガス漏れ時も安全性が確保できています。」
消防設備
点検業者
「危険物を扱う施設の消防点検では、防火区画の信頼性が最も重要です。常時通電型のフェイルセーフ設計は、火災時の確実性という観点から最も信頼できる方式です。点検も容易で、特に化学工場やガス施設のような危険区域での使用を強くお勧めしています。」
このように多くのお客様から高い評価をいただいている防水/防爆タイプの電磁レリーズ「マグネット・ドアホルダー」は、さまざまな産業現場での安全確保を実現しています。これらのお客様の声は、当社の製品が単なる防火設備としてだけでなく、現場の安全と業務効率を両立させる重要なソリューションとして認められている証です。
防水・防爆レリーズが活躍する現場
ここでは、防水・防爆レリーズが特に必要とされ、活躍している主な現場をご紹介します。
化学薬品工場

化学薬品を製造・取り扱う工場では、可燃性の高い原料や溶剤を使用するため、防爆構造の機器が不可欠です。万が一の火災時には防火区画を確実に形成し、被害の拡大を防ぐ役割を担います。
導入メリット: 内部で発生した火災の拡大防止に加え、電気火花による爆発リスクを低減します。化学薬品工場では爆発が連鎖的に拡大するリスクが高いため、防爆レリーズの導入は特に重要な安全対策となります。
ガスを扱う工場・施設

都市ガスや各種工業用ガスを製造・貯蔵する施設では、ガス漏れによる爆発のリスクがあります。こうした環境では、電気火花が爆発の引き金とならないよう、防爆レリーズの使用が推奨されています。
導入メリット: ガス漏れ時の引火源を排除し、安全性を高めます。また、万一の火災時には確実に防火区画を形成し、避難経路の確保にも貢献します。メンテナンス性に優れているため、定期点検も容易に行えます。
半導体製造工場

高純度の特殊ガスや溶剤を使用する半導体製造工場では、微量のガスでも爆発のリスクがあるため、防爆レリーズが重要な安全装置となっています。
導入メリット: クリーン環境を維持しながら、高い安全性を確保できます。また、防爆構造により微量の可燃性ガスが存在する環境でも安全に使用できます。
安全性と信頼性を実現する電磁レリーズ「マグネット・ドアホルダー」

従来の火災時通電型レリーズとは異なり、電磁レリーズ「マグネット・ドアホルダー」は常時通電でドアを保持し、火災信号を受けると電源を切ってドアを解放します。この方式の最大の利点は、火災による配線損傷や停電などでも、確実にドアが閉鎖される点です。この「フェイルセーフ」の考え方は、本当の意味での安全を実現します。
さらに、エポキシ樹脂充填による防水・防爆構造は、様々な厳しい環境下でも確実に機能します。爆発性ガスや粉塵が存在する危険区域でも、内部の電気接点からの火花が外部に漏れることはありません。
当社の電磁レリーズ『マグネット・ドアホルダー』防水・防爆タイプは、安全性と信頼性を兼ね備えた製品として、化学工場、ガス施設、半導体工場など多くの現場で選ばれています。
当社では、電磁レリーズの販売・施工を承ります!

防火戸は日常では「開けておきたい」という利便性と、火災時には「確実に閉める」という安全性を両立させる必要があります。特に危険区域では、この両立がさらに難しくなりますが、防爆・防水レリーズの導入により、安全性と利便性を高いレベルで実現することが可能です。
詳しい製品情報や導入事例については、お気軽にお問い合わせください。またカタログや図面等の情報は当サイトの電磁レリーズ&パワーサプライ製品ページにてご確認いただけます。安全な建築環境づくりのパートナーとして、当社の専門スタッフがサポートいたします。