
火災や地震が発生したとき、自動ドアが動かなくなれば、それは単なる不便ではなく、命に関わる深刻な問題になります。
日本では毎年のように大規模な自然災害が発生しています。もし非常時に避難経路となる自動ドアが開かなければ、多くの人命が危険にさらされる可能性があります。こうした事態を防ぐための重要な技術が「パニックオープン」システムです。
この記事では、自動ドアのパニックオープン機能について、その仕組みから法的義務、施設タイプ別の導入効果まで、知っておくべき知識を徹底解説します。火災や地震などの非常時に、人々を守るために自動ドアがどのように「開く」か、そして法律ではどのように規定されているのかを詳しく説明します。
パニックオープンとは?火災や地震の時になぜ必要?

火災や地震が起きたとき、建物から安全に逃げられるかどうかは命に関わる問題です。しかし、自動ドアが停電で動かなくなったらどうなるでしょう?たくさんの人が一度に逃げようとして出口が混雑したら?こういった問題を解決するのが「パニックオープン」という機能です。災害時に自動ドアを自動的に開けたまま、建物から人々を安全に逃げられるようにする大切な仕組みです。
パニックオープンの仕組み
パニックオープンは「非常時開放システム」とも呼ばれ、火事や地震が起きたときに自動ドアを開けっ放しにする仕組みです。ここでは、パニックオープンがどのような仕組みか解説します。
パニックオープンは以下のように動作します:

- 1火事や地震を感知する
建物の火災報知器や地震センサーが異常を感知します。 - 2信号が送られる
感知した情報は「連動制御盤」という装置に電気信号として送られます。この装置は火災報知器や地震センサーからの非常信号を受け取り、すぐにドアを開く指令を出します。 - 3自動ドアに指令が伝わる
連動制御盤からの指令が自動ドアの制御装置に伝わります。 - 4ドアが開いたままになる
信号を受け取った自動ドアは開いたままの状態になります。こうすることで、災害時に人々がスムーズに避難でき、逃げ遅れる可能性が減ります。
必要な設備
パニックオープンには次の設備が必要です:
これらの設備がうまく連携することで、災害時に自動的にドアが開き、人々が安全に逃げられる道を確保します。
火災や地震が起きたときにドアが開かないとどうなる?
火事や地震の時に自動ドアが開かないと、とても危険な状況になります。どのような問題が起きるか、実際にあった事例を見てみましょう。
パニックと混雑
商業施設やマンションでは、災害時にたくさんの人が一度に逃げようとしてパニックになる恐れがあります。このとき自動ドアが閉まったままだと、出口の前に人が集まって身動きが取れなくなります。最悪の場合、押し合いで二次災害が起こったり、自動ドアのガラスが割れてケガをする危険もあります。
逃げ遅れの危険
商業施設やビルで災害が起きると、多くの人が一斉に外へ逃げようとします。途中のドアが開かないと、逃げ遅れてしまいます。この危険を防ぐために、パニックオープン機能が必要です。
消防活動の妨げ
自動ドアにパニックオープン機能がないと、消防隊が建物内に入って火災報知器の操作盤にたどり着く道も確保できません。そして消火活動が遅れ、被害が大きくなる可能性があります。
責任問題
火災時に防火設備やパニックオープン機能が正しく動かないと、防げたはずの被害が出て「人災」と判断される恐れがあります。
こうした危険を考えると、パニックオープン機能がいかに大切かがわかります。人命を守るための重要な設備として、きちんと設置して定期的に点検する必要があります。
パニックオープンとパニッククローズの違いとは?

災害時の自動ドア制御には「パニックオープン」と「パニッククローズ」という2つの機能があります。名前は似ていますが、働きは逆です。どのような違いがあるか解説していきます。
基本的な違い
「パニックオープン」と「パニッククローズ」の基本的な違いは「開ける」か「閉める」かです。名前の通り、パニックオープンは災害時に自動ドアが開く機能、パニッククローズは災害時に閉まる機能です。
パニックオープン

パニッククローズ

設置場所の違い
パニックオープンが設置される場所:
避難経路にあたる扉、病院のメインエントランスや夜間通用口、集合住宅のメインエントランスにある自動ドアや自転車置き場付近の扉、病院内の避難経路にある扉、自動ドアや電気錠が設置された出口など、避難経路として使用される全ての出入口になります。
パニッククローズが設置される場所:
避難経路ではない自動ドア、金庫室やサーバ室など人はいないけれど延焼を防ぎたいという場所、避難経路外で設置されている自動ドアなど、火災時に炎や煙の拡散を防ぐ必要がある区画の出入口です。
パニッククローズの誤解
「ドアが閉まる」と聞くと「逃げられなくなる」と心配するかもしれませんが、建物には避難経路が必ず設計されています。また、避難経路には「誘導灯」と呼ばれる避難方向を示す明かりの設置が義務づけられているので、それを頼りに避難できます。
このように、パニックオープンとパニッククローズはお互いに助け合う仕組みです。どちらも適切な場所に設置して定期的に点検することで、災害時の安全を守ります。
パニックオープンの具体的な機能や効果

セキュリティと安全性の両立
パニックオープン機能付き自動ドアは、災害発生時に施錠されている自動ドアが自動で解錠し、開放状態を保つシステム です。このシステムで、日常のセキュリティを確保しながら、緊急時には迅速な避難経路を確保できます。
多様な災害への対応力
火災報知設備(煙・熱感知器)や地震感知器からの信号が連動制御盤を通じて自動ドアのコントローラに伝わり、ドアを自動開放します。停電時にも非常電源に切り替わり、開放状態を維持するため、様々な災害シナリオに対応できます。
避難時の安全確保
自動ドアが閉まっていると、扉の前で渋滞が発生して二次災害を招く恐れがありますが、パニックオープン機能によって電気錠が強制的に開錠されることで、避難経路の確保ができ、素早く瞬時に多くの人が避難をすることが可能になります。そして逃げ遅れる人を1人でも減らすことにつながります。
救助活動の円滑化
パニックオープン機能は外からの救命活動にも非常に有効です。火災が起こった建物に救助活動で入る場合、建物の電気錠や自動ドアがすべて開放されていれば、消防隊員などがすみやかに建物内に入ることができます。これにより、より多くの命を救える可能性が高まります。
パニックオープンの法的要件と安全対策

消防法と建築基準法はともに、避難経路の安全確保の観点からパニックオープン機能に関連する規定を設けています。
消防法
消防法では直接「パニックオープン」という用語は使用されていませんが、火災予防条例において「避難経路となる部分に設ける電気錠は、火災時に自動的に解錠されるものとしなければならない」と明確に規定されています。特に不特定多数が利用する施設や宿泊施設では、より厳格な基準が適用されます。
出典:消防法第8条・第17条、消防法施行令第4条の3、東京都火災予防条例第54条の9・第55条の5
詳細については、消防庁公式ウェブサイト(https://www.fdma.go.jp/)や、お住まいの地域の消防署で確認することをお勧めします。各自治体によって条例の内容に違いがある場合がありますので、所轄の消防署に相談することが重要です。
建築基準法
建築基準法施行令第125条の2では、「屋外に設ける避難階段に屋内から通ずる出口」や「避難階段から屋外に通ずる出口」などの特定の出口について、「屋内からかぎを用いることなく解錠できる」構造とすることを義務づけています。パニックオープン機能はこの要件を満たす重要な手段となります。
出典:建築基準法第35条、建築基準法施行令第120条〜第126条(特に第125条の2)、高齢者・障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律
建築基準法の最新情報や詳細な解説については、国土交通省建築基準法関連情報(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/)を参照ください。
設置が必要な施設
パニックオープン機能が特に必要とされるのは次のような建物です。
建物の構造や用途によって解釈が異なることもありますが、基本的には「人命保護」が第一です。特に不特定多数が利用する施設では、消防署の検査で厳しくチェックされます。
東京消防庁のウェブサイト(https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/)では、特定防火対象物の検査や違反対象物の公表制度について詳しい情報が提供されています。
法令遵守と消防点検の対策
消防点検においては、次の対策が重要です。
- 1
連動システムの確認:
火災報知器が作動したとき、自動ドアが確実に開くか、また停電時も非常電源に切り替わって機能するかを確認 - 2
定期点検の実施:
年に1回以上の専門業者による点検を行い、その記録を保管 - 3
従業員への防災訓練:
避難経路の周知やパニックオープンの操作方法の説明 - 4
表示の徹底:
非常解錠方法の表示や避難経路の明示
建築確認申請時には、避難経路図上での自動ドアの位置と開放方向の明示、非常用電源からの給電経路、手動解除装置の設置位置などを適切に計画する必要があります。
また、建築基準法とバリアフリー法の要件も考慮し、通常時の利便性と非常時の安全性を両立させるシステム設計が重要です。
パニックオープン機能は単なる設備ではなく、緊急時に人命を守るための重要なシステムです。「うちは大丈夫だろう」と安易に考えず、適切な対策を講じることが大切です。
パニックオープンシステムの種類

自動ドアのパニックオープン機能にはいくつかの種類があり、建物の用途や規模によって最適なタイプが異なります。適切なパニックオープンシステムを選ぶことで、非常時の安全確保と平常時のセキュリティのバランスが取れた環境を整えることができます。主な種類を見ていきましょう。
停電時解錠型(フェイルセーフ型)
停電時解錠型(フェイルセーフ型)は、電源が遮断された際に自動的に解錠する仕組みです。このシステムは、非常時や災害時に電力供給が途絶えた場合でも、建物内の人々が安全に避難できるように設計されています。
通常時は電気によって施錠が維持されていますが、停電が発生すると電磁石などの機構が作動を停止し、ドアが解錠状態になります。これは特に火災や地震などの緊急事態における避難経路の確保に重要な役割を果たします。
信号連動方式
この方式は火災報知器や地震感知器からの信号を受けて作動します。停電時は非常用バッテリーに切り替わって機能するよう設計されています。制御の自由度が高く、複数の条件設定が可能です。
手動緊急解錠ボタン併用型
自動的に解錠するシステムと一緒に、手動で押して解錠できるボタンも設置するタイプです。主に災害時にシステムが正常に作動しない場合の備えとして重要です。例えば停電で自動システムが動かなくなっても、室内側から緊急解錠ボタンを押せば避難できます。
特にホテルや病院など24時間人がいる施設では、この手動ボタンを設置することで安全性が高まります。既存のマグネット錠(電気で施錠する錠前)を使っている建物でも、後付けで緊急解錠ボタンを設置できるので、安全対策として広く採用されています。
全館一括制御型と部分制御型
パニックオープンシステムには、建物全体の自動ドアを一度に制御するタイプと、エリアごとに制御を分けるタイプがあります。全館一括制御型は、火災や地震が発生すると建物内のすべての自動ドアを一斉に開放します。一方、部分制御型では、建物の用途や重要度に応じて「このエリアのドアは開く」「あのエリアのドアは開かない」といった細かい設定ができます。
例えば、貴重品や危険物の保管庫がある区画は、非常時でも一部のドアが開かないように設定することも可能です。オフィスビルや複合施設など、セキュリティレベルが場所によって異なる建物では部分制御型が適しています。
パニックオープンの手動操作

パニックオープンシステムは通常、火災報知器や地震センサーからの信号で自動的に作動しますが、これらのセンサーが作動しない緊急時や、システム障害の際には手動で操作する必要があります。ここでは、代表的な手動操作方法と注意点を解説します。
緊急解除スイッチの利用

室内側からの脱出を容易にするための「緊急解錠ボタン」が設置されていますことがあります。これは室内側から押すことで解錠できる装置で、特にマグネット電気錠(電磁石錠)などが使用されている場所では重要です。パニックオープン機能がない場所でも避難経路を確保するために活用されます。
パニックバー・パニックハンドルの使用

避難経路の防火戸などには、「パニックバー」や「パニックハンドル」と呼ばれる横長の金属バーが取り付けられていることがあります。これは押すだけで解錠・開放できる仕組みで、多くの人が一度に避難する際に有効です。特徴は直感的に操作できることで、パニック状態でも簡単に扉を開けられます。
非常開放スイッチの操作

自動ドアには赤い保護カバー付きの「非常開放スイッチ」が設置されている場合があります。緊急時には、このカバーを開けて、中のボタンを操作します。スイッチは通常、避難経路上の目立つ場所や自動ドア付近に設置されています。
建物別パニックオープン機能の導入効果

商業施設
マンション・オフィスビル
病院・介護施設
火災や地震などの災害発生時に自動的に解錠・開放されることで、多くの命を守ることができます。特に商業施設では顧客の安全確保と多様な避難経路の確保、マンション・オフィスビルではセキュリティと安全性の両立、そして病院・介護施設では移動に制約のある人々の避難支援と救助活動の円滑化に効果を発揮します。
まとめ:人々を災害時に守るパニックオープンシステム

パニックオープン機能は、日常のセキュリティと非常時の安全確保を両立させる重要なシステムです。火災や地震などの災害発生時に自動ドアが開放され、避難経路を確保することで多くの命を守ります。
商業施設では来店客の迅速な避難を、マンション・オフィスビルでは日常のセキュリティを損なわずに非常時の安全を確保し、病院・介護施設では移動に制約のある方々の逃げ遅れを防ぎます。また、救助隊の迅速な進入を可能にし、二次災害の防止にも効果を発揮します。
実際の設備導入や点検については、建物の構造や用途によって要件が異なるため、必ず専門業者や所轄消防署にご相談ください。適切な専門家の指導のもと、安全な環境づくりを進めることをお勧めします。
当社のパニックオープン関連製品紹介
これまでパニックオープンシステムについて解説してきましたが、ここからは具体的な製品例として当社のパニックオープン製品ラインナップをご紹介します。
当社は創業以来、「人命を守る」という理念のもと、最先端技術と確かな品質で多くのお客様から信頼をいただいてまいりました。火災や地震などの緊急時に確実に作動し、人々の安全な避難を支援する製品は、商業施設、オフィスビル、医療施設、公共施設など幅広く採用されています。
パニックバー/パニックハンドル


パニックバー/パニックハンドルは、緊急時に直感的な操作で避難できる防火戸用緊急退避装置です。ドアに付いているバーを押すだけの「ワンアクション構造」により、パニック状態でも素早く安全に脱出できます。ANSI/BHMA A156.3グレード1認証を取得し、3時間防火戸にも対応する堅牢な構造と、シンプルで美しいデザインが融合した製品です。大型商業施設や教育機関などの避難経路に最適で、お客様のご要望に応じてカスタマイズも可能です。
マグネット電気錠


マグネット電気錠は、災害時の「パニックオープン」機能と日常のセキュリティ管理を完璧に統合した先進的なソリューションです。電源供給方式に応じて「フェイルセーフ」(停電時自動解錠)または「フェイルセキュア」(電源喪失時も施錠維持)のいずれかの動作モードを選択可能です。135kgから最大540kg×2までの磁力で扉を固定できる強さ(保持力)を備えたラインナップで、片開き・両開きから引き戸・ガラスドアまで、あらゆるドアタイプに対応します。避難経路確保が最優先のオフィスビルやマンションのエントランスから、高度なセキュリティ保護が求められる重要施設まで、あらゆる建築環境の安全基準に適応する優れた汎用性を実現します。
電気ストライク

電気ストライクは、現場で簡単に「停電時施錠」(フェイルセキュア)または「停電時解錠」(フェイルセーフ)の切替が可能で、火災報知設備や地震センサーと連動して非常時に適切に動作します。ステンレス製ハウジングと100万回以上の高耐久性試験に合格した堅牢な設計により、マンションの共用玄関から高セキュリティが求められる施設まで、避難経路の安全確保と日常のセキュリティ管理を同時に実現します。
ガラスブレイク・コールポイント(緊急解除スイッチ)


ガラスブレイク・コールポイント(緊急解除スイッチ)は、パニックオープンシステムとして機能するボタン式装置です。危険なガラスの破片を出さずに緊急解錠できるリセット可能な設計。学校やショッピングモールなど人が集まる場所に最適で、夜間でも視認しやすいバックライト付きモデルや、いたずら防止アラーム機能付きのタイプもご用意しています。デュアル出口ユニットは出口ボタンと緊急ドアリリース機能を一体化し、水平・垂直どちらの取り付けにも対応します。
パニックオープン関連製品の
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新築物件では設計段階からの導入計画、既存ドアへの後付けも最小限の工事で実現可能です。
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